【二次創作】「公式かと思った」は褒め言葉ではない【野生の公式】

 

二次創作やファンアートを作成する際に
最初のお手本にするのは本家、つまり「公式」になると思います

じゃあ公式の作風に近ければ近いほど良いイラストかと言うと
そんなことは決してありません。

むしろ作品に「公式かと思った」という感想が来ることは危ないことです

逆に見る側にとっても「公式そっくりの絵」は
安易に「凄い!」「上手!」と評価したり拡散したりするべきでないと思います。

本記事では「公式絵そっくりの二次創作」の問題点や
描く側が注意するべき対処法などをまとめました。

 

問題点①:公式に迷惑が掛かる


大前提としてコレです。
公式と見間違う作品なんて悪く言えば海賊版です

公式以外の人間が作った公式っぽいイラストって
公式にとっては何の得にもなりません。

たとえばファンアートを公式の絵だと勘違いしたファンが
何のイラストなのか等、公式に問い合わせたりするかもしれません。
(「二次創作による幻の最終回」に代表される問題ですね。)

さらに二次創作というのは原作で描写されてないものを描くことが往々にしてあります。
R指定のものやカップリング、その他諸々…
それを公式だと誤認してしまった人が、原作に対して公式の意図しない印象を抱いてしまうかもしれません。


ただでさえ二次創作はグレーゾーンな行為です
昨今は二次創作を許可してくれたり二次創作ガイドラインを明記してくれたりする作品も増えましたが、
もし二次創作と呼ばれるものが公式に迷惑をかけて規制が厳しくなろうものならたまったもんじゃないですよ。

それも一大事になろうものなら作品の垣根を飛び越える可能性だって悠にあります。
「あの作品は二次創作の件で苦労してるみたいだからコッチも被害が出る前に禁止にしておこう」なんてことが全然あり得ます。

二次創作も明らかにファンアートだと分かるからある程度の妄想やifの表現が許されるわけで、
絵も背景も、なんなら付随の文章まで公式に似せたら「悪意がある」と言われても文句は言えません

昨今ディープフェイクが問題になっているのと同じです。
イラストなら許されるってことはないのではないでしょうか。

 

問題点②:他のファンの誤解を生む


前項で少し触れましたが、原作のファンがファンアートを公式絵だと誤認するかもしれない、ということです。
よく公式絵そっくりのファンアートに「紛らわしいことをするな」と怒っている人もよく見かけます。

描き手からしたら「そんなの投稿元のアカウント名やアイコン見たら公式かどうかくらい分かるだろ」と思うかもしれませんが、世の中そんなに甘くないです。

SNSの画像というのは
投稿者が描いたもの」なのか「スクリーンショット」なのか「他人の画像を保存したもの」なのか、なんて区別がつかないんです。

公式絵そっくりの二次創作を見た人が「知らないうちに公式から新情報が出てたのかも!」と思っても不思議じゃありません。

説明欄や備考欄で注意書きしてあるから読んでくれ」というのも無理があります。
今やグローバル展開する作品も数多あります。
もし違う言語圏のファンにまで拡散されてしまったら、その注意書きは通じません

それに誰か他の人が画像だけ転載するかもしれない
そのとき文章の注意書きなんて意味をなしません。

また作品やキャラクターを画像検索する人もいます
検索結果には文章の注意書きは表示されません。
画像だけでは公式かファンアートかなんて区別がつきませんよね。

要はネットの海に投げた時点で作品だけが一人歩きする可能性なんていくらでもあるということ
そうなってしまったら描き手ひとりの手になんか負えません。

 

対処法①:公式っぽくしない


これが一番です。

自分の手癖で描くなり、ペンや着色を変えるなり、
絵の雰囲気を変える方法ならいくらでもあります。

公式に似ているかどうかだけが作品のクオリティを決めるわけではありません。

 

対処法②:注意書きとサインを作品内に入れる


公式絵に似せた作品を描きたいなら
作品内に「ファンアートであること」と「作成者のサイン」を書くべきです。

「作品内に書くと作品が損なわれるから嫌」かもしれませんが、
公式に迷惑を掛ける危険性を無視してまで求めるものって何があるんでしょう
自分の作品への評価でしょうか。
注意書きひとつで「公式そっくりな絵が描けてすごい」という評価は変わりません。

公式に似せて描けるくらいの画力があるなら
背景でもどこでも「fan art」の文言くらい作品の雰囲気を損なわずに入れられます。

同様にサインも入れるべきです。
もし公式そっくりのイラストが無断転載などをされたとして、
画風が没個性的だったら「描いたのは自分だ」と証明することが難しくなります。
要するに作者本人も損害を被る可能性があるということです

それでも注意書きを作品に書き入れるのは嫌だとなるなら
作品の閲覧数を稼ぎたいだけの、原作をリスペクトしていない人
だと筆者は思ってしまいますね。

「野生の公式」について


この言葉は「公式でも納得できるくらいクオリティが高い」という褒め言葉として使われることが多いと思います。
しかしこれは誰が見てもファンアートであることが分かりきっていることが大前提だと思うのです。

たとえば作品形態がMMDなど公式に存在しないものである、または作品の内容や作風からして独創的であるなど、
「公式が作ったものではない」と誰もが判断できるものである
それであって初めて「野生の公式」は褒め言葉になり得るのではないでしょうか。

しかし反面、イラストなどの場合は公式に似せやすい形態であり、
見た人が公式と見間違えた時点でアウトだと思います。
その場合の「野生の公式」の意味は「公式の紛い物」にまで価値が下がると言っても過言じゃないと思います。


さらに昨今、トレパク・無断転載・無断加工・AI生成…などなど、クリエイター関連の議題は尽きることがありません。
そんなご時世に何かと似ている」「何かと比較する」類の言葉は褒め言葉として機能しなくなってきているのかなとも感じられます

「野生の公式」と言うくらいなら「こんなにクオリティの高い作品を生み出せてすごい」と言語化した方が語弊なく伝わるのかもしれません。

 

公式絵に似せると評価されやすいのは何故なのか


公式絵そっくりの絵が拡散されたり評価されたりしやすいのは当然です。
大きな理由を数点あげておきましょう。

そっくりな絵が描けることは凄いことだと思われやすい


「模写が上手い」は分かりやすい指標であるということ
普段絵を描かない人にとって「お手本とそっくりな絵が描ける」というのは
絵が上手・下手を判断する分かりやすい基準のひとつです。

小学校なんかで、芸術的な絵よりもゲームやアニメの模写が人気だったりしませんでしたか?
あるいはカラオケの採点譜面どおりに歌えると「歌が上手い」と過剰に評価されたり。
それらと同じようなことで、
「お手本どおり」というのは誰が見ても分かりやすい評価基準ということです

もちろん模写もひとつのスキルですので評価されるべきであるものに違いありませんが。

公式絵に似ていると目を引きやすい


そもそもSNSのユーザーは「何か良い作品に出会いたい」と能動的に探す人ばかりではありません。
大抵、SNSを眺めていて偶然イラストを見つける、という人が多いと思います。

そういう流し見の状態でも目に止まりやすいのが公式に似た絵です。
そりゃあ「好きな作品の知らない公式絵」があったら誰でも手を止めます。
実際は公式絵ではないのですが。

それで上記のとおり、「公式そっくりで凄い!」と思った人が拡散するというわけです。

 

公式絵が好きな人は多い


公式、つまり原作ファンの中には
作風・画風が好きと言う人も当然多いでしょう。

そんな人にとっては公式っぽい絵は嬉しいものに決まってます。
「公式がこんな絵を描いてくれたらな」というのを実現してくれるのが
二次創作ということですね。
本当はあまり良いこととは言えませんが。


要するに、
公式に似せた二次創作はそうでない作品よりも
公式の恩恵を多大に受ける
ってことです。


 

最後に


結局、二次創作は原作・公式があって初めて成立するものであると同時に
公式の恩赦ありきで楽しめているものです。

二次創作を作る側としては「いつ公式に叱られても文句は言えない」という危機感と共にあるべきですし、「公式に迷惑がかからないように念のため○○しておこう(注意書きをしよう・サインを分かりやすく書こう、など)」の精神はいくらあっても良いと思います。

「こんな弱小アカウントの作品で大ゴトにはならんだろう」なんてタカを括るのは良くないです。謙虚な姿勢は否定しませんが、何の弾みで作品が拡散されるか分かりませんからね。

見る側としても、公式絵に似せにいっている作品を安直に評価するべきではないとも思います。難しい話ではありますが。


公式へのリスペクトを忘れずに、二次創作文化が好ましい形でこれからも盛り上がっていくと良いなと思う所存です。

最後までお読みいただきありがとうございました!